手荒れが原因で美容師を辞めてしまう人ってかなり多いですよね。
僕も、かれこれ15年ほど手荒れに悩まされている美容師の1人なので、そのツラさはよくわかります。本当に酷くなった時は、辞めようか悩んでいた時期もありました。
乾燥から始まり、ひび割れし、あか切れになって最終的はただれていく…。水泡もできたりしますよね。
「指を曲げることも出来ず、お箸も持てない」、水を触ることが本当に嫌だった時期もありました。
おかげで手荒れのピークは過ぎましたが、今でも冬場と梅雨時期は状態が悪化してしまいます。
少しでも気を抜くと、あっという間にひどい状態になってしまいますよね。
そんな状態であっても、僕が美容師を続けることが出来ているのは、あるお医者さんとの出会いがあったおかげなんです。
その先生の治療方法が他と違っていたわけではなく、治療方針が「親身になって考えてくれる」というものでした。
僕はそこで「カウンセリングの本当の意味」を学ぶ事が出来ました。
1人の医者との出会い
手が荒れてくると、当然「皮膚科」通いが日課になるわけですが、処方された飲み薬や塗り薬をキチンと塗っても治る気配が見当たらない。
手が治るまで仕事を休むわけにもいかないし、寝ている間に掻いたりもしちゃうんで、治るわけないですよね。
接客業ならではですが、お客さんに「あそこの病院がいいよ〜!」と教えてもらっては、通ってみたりもしてましたが、どの病院へ行っても大体怒られる…。
確かに、お医者さんからすると「完治」を目指してのことだろうけど、ちょっと心無いですよね。
もう少し「患者に寄り添う」ってことが出来ないものかと悲しくなります。
これは、美容院でも同じ様な状況があります。髪質やくせ毛で悩んでいるお客さんに対して、「あなたの髪質で、この髪型は無理だから諦めなさい」って言われても、なかなか受け入れにくい部分がありますよね?
もちろん、髪質によって難しい髪型があるのは事実ですが、お客さん側も「無理を承知で聞いてみる」という気持ちもあると僕は思います。
もしかしたら、なにか方法があるのではないか?この人なら叶えてくれるのではないか?という想いがあるから、相談してくれているのではないでしょうか?
そういった想いを、たった一言で片付けてしまうのは、あまりにも寂しことです。
ましてや、相手を傷つけるような言い方や態度は、絶対にしてはいけないというのが僕の考えです。
そうするためには、「親身になって考えるカウンセリング」がとても重要になると言えます。
僕にとっての最高の医者
今まで数えきれない程の「皮膚科」に通ったけど、どこもパッとしなくて、いい出会いがなかったんだけど「1人の医者との出会い」が、僕を救ってくれました。
その先生は、僕の手を見てすぐに「これはツライねぇ。毎日頑張ってるんですね!」と言ってくれました。
このたった一言で、僕はこの先生のいう事を「必ず守る」と誓いました。
その先生が、最後に言ってくれた言葉が今でも忘れられません。
「心配しなくても大丈夫ですよ!完治は難しいかもしれませんが、今より必ず良くなります。まずは、上手に付き合っていく。という方向で頑張りましょう!」
僕にとっては、まさに「最高の医者」でした。
人の痛みがわかる「共感力」
僕の理想とする美容師像は「人の悩みにどれだけ寄り添うことが出来るか」というものです。
他人事だからといって、理想や正論だけを並べて説明さても響かないのではないでしょうか?
その説明はきっと事実で、忠実に守ることができれば、必ず良くなる方法を教えてくれているんだと思うけど、現実的は非常に難しいことばかりだと感じます。
そんな非現実的な事をどれだけ一生懸命伝えようとしても、相手は聞く耳を持ってくれないので時間の無駄ですよね。
つまり、理想と現実を「擦り合わせた着地点」を見つけて欲しいと思ってる。
そういう「共感」できる言葉が、一番心に響くし、頑張るチカラを与えてくれます。
美容師のカウンセリング
「医者と患者」の関係は「美容師とお客さん」の関係によく似ています。
技術ももちろん必要ですが、それ以前に「考え方や人柄」がお客さん(患者)の心を動かします。
「カウンセリング」とは、悩みを打ち明けてもらわなくては本題に入って行く事ができません。
しかし、他人に自分の悩みを打ち明けるのは「勇気」が必要ですし、なにより「信頼関係」がなければ打ち明けにくいのではないでしょうか?たとえ相手が専門家であったとしてもです。
他人がいきなり「あなたの悩みはなんですか?」と尋ねても、本当の悩みを引き出すのは難しいと思います。
しかし、「私はあなたの味方ですよ。」という信頼関係の構築からスタートさせ、「不安ですよね」「モヤモヤした気持ちにもなりますよね。」その気持ちはよくわかります。
という共感を示し、「私なら他にも色々とあなたの役に立てるかもしれないので、よろしければ他にどんなお悩みを抱えているのか教えてくれませんか?」という流れがあった場合はどうでしょうか?
こういったステップを踏む事で、「この人(専門家)は、私の事を親身になって考えてくれている。」と感じる事ができませんか?
これが本来のカウンセリングの姿なのではないでしょうか。
美容院で「今日はどのくらい切りますか?」という会話を一度は聞いた事があると思います。
僕はこの言葉が大嫌いなのですが、これってカウンセリングと呼べる内容でしょうか?
それに対し、「どのくらい切るか?」という質問は、あまりにも的が狭すぎると思いませんか?
もっと大きな枠で「イメージを変えたいか?変えたくないか?」という質問からスタートさせることで、お客さんが答えやすくなる質問に変わります。
そこから、少しづつ枠を小さくしていき、「具体的な長さや髪型を決めていく」という風に順を追ってあげることで、提案もしやすくなるし、共感することができます。
お客さんが本当に求めているものは「髪型」という見える部分ではなく、髪質やダメージとの「上手な付き合い方」かもしれないし、「手入れの楽さ」という場合もあります。しかしそれは、「その人に寄り添う内容のカウンセリング」をしなければ、理解してあげる事はできません。
カウンセリングを通じて、「美容師とお客さんとが一緒になって髪型を作っていく」という関係性が理想です。
最後に
これは、僕がアシスタントの時の話で、もう10年以上前の話なのですが、その時以来、同じ病院、同じ先生に診てもらっています。
手荒れに悩んでいる多くの美容師にも、僕と同じような体験があれば辞めずに済むのではないか?と思うんですが、医者との「相性」もありますしね。
僕は、自身の体験からこの事を学んだのですが、あなたにも病院での問診やお店での接客の際に、「感動」した経験が1度はあると思います。
なぜ感動したのか?どういう言葉が心に響いたのか?という理由を考えてみてください。
そして、その答えは「美容師のカウンセリング」に関連づけることができるはずです。
そうすることで、カウンセリングの内容はガラリと変化します。
アシスタントのうちから、「お客さんの悩み」を親身になって考えることができれば、必ず「信頼される美容師」になれます。
そして、それを実践すればアシスタントというポジションであってもお客さんから指名をもらう事ができます。
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